法人化(法人成り)の検討にあたって重要なこと

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法人化(法人成り)の検討にあたって重要なこと

法人化(法人成り)を税金面からのみ検討していませんか?

 

西東京市の税理士の小松です。

 

今回は、「法人化(法人成り)の検討にあたって重要なことについて」取り上げさせていただきます。

 

今回のポイント

①法人化(法人成り)の検討のタイミングは?

②法人化(法人成り)の検討にあたってのシミュレーション

③法人化(法人成り)の検討のまとめ

 

①法人化(法人成り)の検討のタイミングは?

 

個人で事業を行っている方で、軌道に乗り業績が順調に上がっている場合には、法人成りを視野に入れることになるかと思います。

 

法人成りを検討する際に、どのくらいの売上や所得があれば法人成りを検討するタイミングとなるのか悩まれるものと思われます。

 

今回は、法人成りにあたってのシミュレーションを基に、個人の場合と法人成りした場合でどのように変動するかを見ていきます。

 

法人成りのメリットやデメリットについては、こちらを参照ください。

 

②法人化の検討にあたってのシミュレーション

 

今回法人成りのシミュレーションにあたって、目安として3つのパターンで試算しております。

 

1)所得が500万円の場合

・・・法人成りを検討し始める上ので目安の金額

2)所得が850万円の場合

・・・給与所得控除額が上限の195万円となる金額

3)所得が1095万円の場合

・・・配偶者控除を満額受けられる金額

 

※所得=個人事業の収入-経費としております。

 

<シミュレーションにあたっての前提条件>

・個人事業をそのまま法人(1人社長)とする

・個人事業の事業所得(収入-経費)を全て役員報酬として支給する

・個人事業の税金は事業所得から青色申告特別控除65万円を控除して算出

個人の国民健康保険等の社会保険は練馬区を基に試算(R2年度)

・個人の所得控除は社会保険料控除と基礎控除(所得税48万円、住民税43万円)のみ

・法人は赤字のため、法人税等は均等割り70,000円(東京都の場合)のみ発生(均等割りは赤字でも発生する税金)

・法人成り後の社会保険は、全国健康保険協会(協会けんぽ)を基に試算

・年齢は40歳(後期高齢者支援金分、介護分あり)で扶養なし(税金と社保)

 

1)所得が500万円の場合

 

<税金>

個人事業の場合

・所得税 221,000円

・住民税 321,000円

・事業税 105,000円

・合計  647,000円

 

法人成りした場合

個人分

・所得税    138,000円

・住民税    239,000円

・事業税        0円(事業所得が給与所得となるため発生なし)

・個人分合計  377,000円

法人分

・法人都民税均等割 70,000円

合計         447,000円

 

税金としては、個人事業の場合647,000円であったのが、法人成りすることにより、個人と法人分合計で447,000円となり、200,000円トータルの税金が減少します。

 

 

2)所得が850万円の場合

 

<税金>

個人事業の場合

・所得税  838,000円

・住民税  631,000円

・事業税  280,000円

・合計   1,749,000円 

 

法人成りした場合

個人分

・所得税    555,000円

・住民税    493,000円

・事業税        0円(事業所得が給与所得となるため発生なし)

・個人分合計    1,048,000円

法人分

・法人都民税均等割 70,000円

合計        1,118,000円

 

税金としては、個人事業の場合1,749,000円であったのが、法人成りすることにより、個人と法人分合計で1,118,000円となり、631,000円トータルの税金が減少します。

 

3)所得が1095万円の場合

 

<税金>

個人事業の場合

・所得税 1,377,000円

・住民税  870,000円

・事業税  402,000円

・合計  2,649,000円 

 

法人成りした場合

個人分

・所得税                1,033,000円

・住民税       723,000円

・事業税           0円(事業所得が給与所得となるため発生なし)

・個人分合計    1,756,000円

法人分

・法人都民税均等割 70,000円

合計        1,826,000円

 

税金としては、個人事業の場合2,649,000円であったのが、法人成りすることにより、個人と法人分合計で1,826,000円となり、823,000円トータルの税金が減少します。

 

どの所得のパターンでも法人成りを行った方が、トータルの税金は減少します。

 

今回のシミュレーションでは、個人事業の時の所得を全て役員報酬としているため、青色申告特別控除と給与所得控除分の差額分だけ控除が増えているという要因もあります。

 

1)所得500万円の場合

青色申告特別控除額  65万円

給与所得控除額     144万円

控除額増加分          79万円

 

2)所得850万円の場合

青色申告特別控除額   65万円

給与所得控除額   195万円

控除額増加分    130万円

 

3)所得1095万円の場合

青色申告特別控除額   65万円

給与所得控除額   195万円

控除額増加分    130万円

※給与所得控除額が給与収入850万円で上限の195万円のため所得850万円の場合と同額

 

法人成りをすれば、事業所得から給与所得となるため、給与所得控除額を適用出来るというメリットがあります。

 

また、事業税は個人事業の場合は事業所得のため発生しますが、法人成り後は役員報酬となりますので、個人では発生しないことになります。法人で利益が出る場合には法人事業税が発生しますが、今回のシミュレーションでは、個人事業の所得を全て役員報酬としているため法人事業税も発生しません。

 

税金面で見ると、どのパターンでもトータルで減少するため、法人成りを進めようと思われるかも知れません。実際にネット上などでは税金の減少効果のみをもって、法人成りを推奨しているようなサイトも見受けられます。

 

はたして、法人成りの検証は税金面のみで大丈夫でしょうか?

 

税金面の検討も重要ですが、社会保険の面からの検討も非常に重要です。

 

社会保険は、法人の場合は会社負担分も発生してきますので、税金が減少した分以上に社会保険の負担が増加することがあります。

 

続いて、同パターンで社会保険面のシミュレーションを見ていきます。

 

1)所得が500万円の場合

 

標準報酬月額 500万円÷12=41.6万円で試算

 

<社会保険>

個人事業の場合

・国民年金   198,480円(月16,540円×12ヶ月)

・国民健康保険 527,000円(後期高齢者支援金、介護分含む)

・社会保険合計 725,480円

 

法人成りした場合

個人分

・健康保険 290,000円

・厚生年金 457,000円

・社保合計 747,000円

法人分

・健康保険 290,000円 

・厚生年金 457,000円

・社保合計 747,000円

 

個人+法人負担分 1,494,000円

 

社会保険としては、個人事業の場合725,480円であったのが、法人成りすることにより、個人と法人分合計で1,494,000円となり、768,520円トータルの社会保険が増加します。

 

2)所得が850万円の場合

 

標準報酬月額 850万円÷12=70.8万円で試算

 

<社会保険>

個人事業の場合

・国民年金      198,480円(月16,540円×12ヶ月)

・国民健康保険    926,000円(後期高齢者支援金、介護分含む)

・社会保険合計 1,124,480円

 

法人成りした場合

個人分

・健康保険  495,000円

・厚生年金  714,000円(標準報酬月額65万円が上限)

・社保合計 1,209,000円

法人分

・健康保険  495,000円 

・厚生年金  714,000円(標準報酬月額65万円が上限)

・社保合計 1,209,000円

 

個人+法人負担分 2,418,000円

 

社会保険としては、個人事業の場合1,124,480円であったのが、法人成りすることにより、個人と法人分合計で2,418,000円となり、1,293,520円トータルの社会保険が増加します。

 

3)所得が1095万円の場合

 

標準報酬月額 1095万円÷12=91,2.万円で試算

 

<社会保険>

個人事業の場合

・国民年金      198,480円(月16,540円×12ヶ月)

・国民健康保険    990,000円(後期高齢者支援金、介護分含む)

・社会保険合計 1,188,480円

 

法人成りした場合

個人分

・健康保険  638,000円

・厚生年金  714,000円(標準報酬月額65万円が上限)

・社保合計 1,352,000円

法人分

・健康保険  638,000円 

・厚生年金  714,000円(標準報酬月額65万円が上限)

・社保合計 1,352,000円

 

個人+法人負担分 2,704,000円

 

社会保険としては、個人事業の場合1,188,480円であったのが、法人成りすることにより、個人と法人分合計で2,704,000円となり、1,515,520円トータルの社会保険が増加します。

 

どの所得のパターンでも法人成りを行った方が、トータルの社会保険は増加します。

 

法人負担分が増えるのも要因の一つですが、厚生年金が増加した分は将来の年金支給に反映されますので、その点などは考慮して検証を行う必要はあるかと考えられます。

 

税金面と社会保険面のシミュレーションをまとめると以下のようになります。

 

1)所得が850万円の場合

 

・税金減少額    ー200,000円

・社会保険の増加額   768,520円

・トータルの差額         568,520円の増加

 

2)所得が850万円の場合

 

・税金減少額     ー631,000円

・社会保険の増加額   1,293,520円

・トータルの差額          662,520円の増加

 

3)所得が1095万円の場合

 

・税金減少額     ー823,000円

・社会保険の増加額   1,515,520円

・トータルの差額          692,520円の増加

 

となります。

税金面と社会保険面をトータルで比較すると、社会保険分の負担が大きいため、法人成りを行うとトータルで増加することになります。

 

③法人化(法人成り)の検討のまとめ

 

法人成りの検討にあたりお伝えしたいのは、税金面のみのシミュレーションでは足りないということです。社会保険を含めてトータルで検討を行う事が重要となります。

 

今回の法人成りのシミュレーションは、個人事業の事業所得をそのまま法人の役員報酬とすることを前提としておりますので、税金面ではとても節税を図れる結果となっております。

 

法人側では赤字となっておりますが、役員報酬の設定により法人に利益を残すようにすれば、法人側でも節税を図れますので、個人、法人を含めた税効果はより大きくなるものと思われます。

 

また、消費税の課税事業者になるタイミングで法人成りを検討されるのも一つのタイミングです。

 

社会保険の負担が増えると言っても、厚生年金分は将来の受け取れる年金が増加しますので、外部に積み立てているようなものかとも考えられます。年金の位置づけをどう考えるのかというのも一つの判断材料となります。

 

実際に法人成りした後に社会保険の負担を目の当たりにし、こんなはずじゃなかったとならないように、法人成りの検討にあたっては、税金面、社会保険面の両面からの検討をされることをお勧めします。

 

法人化のシミュレーションを行う上で、売上規模、扶養人数や年金基金、iDeCoなど個人ごとに状況は違います。

 

当事務所では、お客様に合わせた法人成りのシミュレーションを行っておりますので、ご興味がありましたらお気軽にご相談下さい。

2020/12/19


※投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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プロフィール

小松 悟(こまつ さとる)
西東京市の税理士
1982年8月25日生まれ
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